健診・予防・ワクチン
健康診断
健康診断では動物たちの体に異常がないかどうかを調べると同時に、飼い主様の誤った知識を修正する機会でもあります。
特に近年では、ペットショップやインターネットなど、情報を簡単に手に入れられる時代です。しかし、その情報すべてが正しいとは限りません。また、動物たちには個体差がありますので、もしその情報が正しかったとしても、その子にとって適した情報であるかどうかはわかりません。
間違った知識のまま飼育を続けると、動物たちの体調不良を引き起こす原因になります。
例えば、カメやヘビなどの爬虫類の場合、室内の温度が不適切だと体調不良につながります。セキセイインコなどの鳥類に多い足の震えは、食事がカルシウム不足の原因かもしれません。また、ペットショップから鳥類を迎え入れた場合は、購入して数日は元気でも、時間が経ってから急に不調を起こすことがあります。購入直前にショップ内で細菌やウィルスに感染し、時間が経ってから感染症の症状がご自宅で現れるのです。
的確な診療を実現するには、事前にご記入いただく「問診票」が重要です。
飼育環境や食事内容、ご自宅での過ごし方などを把握し、動物たちの現状を知るために欠かせません。ご記入いただいた内容をもとに診察を行い、必要な検査を実施してまいります。
動物たちは自分で体調不良を訴えることができず、症状を隠したままにしてしまう子も多くいます。重症化を予防して健康を維持するために、最低でも年に1回以上は健康診断を受診しましょう。初めての動物を飼育する場合など、わからないことがあるときも、まずは当院にご相談ください。
犬
予防プログラムの確認:狂犬病、混合ワクチン、フィラリア予防、ノミダニ予防身体検査、検便、犬種ごとに起こりやすい注意点の確認。
猫
予防プログラムの確認:混合ワクチン、フィラリア、ノミダニ予防身体検査、検便、エイズ・白血病ウイルスの感染リスクの評価
エキゾチックアニマル
基本的に「病気を隠す」動物です。犬や猫に比べて野生に近く、狙われる側の立場であるが故に病気を隠して生き延びようとします。
「動物を飼ってみたけどなぜか弱ってきた。」を少しでも減らしていきませんか?
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インコ類・文鳥
身体検査、検便、食事指導・発情管理の話。検便で「カビ」が見つかる事があります。
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ウサギ、モルモットなど
身体検査、検便、食事指導。歯のトラブルが多いです。予防の話をします。
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フェレット
予防プログラムの確認:ジステンパーワクチン、フィラリア予防。身体検査。
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ハリネズミ
身体検査、皮膚検査、飼育管理・食事指導。ヒフ病や肥満が多くみられます。
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フクロモモンガ
身体検査、検便、飼育管理・食事指導。食事が少し特殊です。
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爬虫類・両生類
身体検査、検便、飼育管理・食事指導。大概の種は対応可です。
予防
ウサギの避妊手術のすすめ
エキゾチックアニマル(小動物)において、予防的な避妊去勢手術を行うのは「ウサギ」です。特にメスの場合、5歳以上の約8割に子宮の疾患があるというデータがあります。子宮内膜症や子宮腺癌などにより、大量出血やがんが転移するリスクもあります。将来の病気を予防するためにも、若く健康なうちに避妊手術を行うことが大切です。
ウサギはワンちゃんやネコちゃんと異なり、使用する麻酔の種類や量、麻酔のかけ方も特殊です。麻酔のリスクに十分に配慮し、安全な手術の提供を徹底しております。皮膚が薄いウサギの手術で意識しているのが、「縫合の仕上がりの美しさ」です。縫合の精度が低いと、手術後に傷口から出血したり痛がったりする恐れがあります。
当院では縫合時に使用する糸の細さ、糸を通す場所も事前にシミュレーションを重ね、体にかかる負担を可能な限り抑えることを大切にしております。カラーを使用するケースはごくわずかです。
事前の精密検査はもちろん、将来のリスクについても事前にご説明し、飼い主様にご理解とご納得をいただいた上で手術を行います。
エキゾチックアニマルの診療経験を生かした「犬・猫の避妊去勢手術」
エキゾチックアニマルのような小動物の皮膚は往々にして非常に薄いため、繊細な縫合技術が求められます。さらに、もし縫合の精度が悪い場合、皮膚が弱いため手術後の出血を引き起こし、治癒を遅らせてしまうこともあります。
そのようなエキゾチックアニマルの手術を数多く行っている当院では、犬・猫の避妊去勢手術の縫合にもこだわり続けてまいりました。
抜糸の必要がない糸を使って、傷口から糸が見えないように縫合し、傷口はきれいで目立ちにくく、ひきつれや盛り上がりなどはほとんどない状態を目指しています。
多くの病院では、手術後にエリザベスカラーやエリザベスウェアを着てもらうと思うのですが、当院では多くの子がそれらを使用せず、来た時と同じ状態でお家に帰ってもらっております。手術後に傷口を気にしてなめたり、ストレスになったりする心配がほとんどないためです。
ただ、開腹しての子宮摘出手術を行っていますので、数日間は消炎・鎮痛作用のあるお薬をきちんと服用し、安静な状態を保っていただけるようお願いいたします。
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将来の病気予防
シニアになるにつれ、生殖器系に関連する病気のリスクが高まる恐れがあります。避妊・去勢手術により、メスは子宮・卵巣・乳腺周囲の病気、オスは前立腺や肛門などの病気を発生させるリスクが少なくなります。病気を防ぎ健康に暮らすためにも、避妊・去勢手術を早めにご検討ください。
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発情行動の軽減
発情期にかけてメスは気が立ち、オスは欲求不満から問題行動を引き起こす場合があります。メスのワンちゃんは出血する恐れがあり、お部屋を汚してしまうかもしれません。避妊・去勢手術により中性化し、発情期の問題行動を軽減したり、性格が穏やかになったりします。
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望まない妊娠を防ぐ
多頭飼いを目的としていない場合は、望まない妊娠を防ぐためにも避妊・去勢手術を推奨しております。過去の日本では外飼いのワンちゃんやネコちゃんが多く、望まない妊娠により生まれた子たちが殺処分されてしまうケースが多くありました。
避妊・去勢手術には「大切な命を守る」という役割もあるのです。
適した時期に行う予防「ワクチン」
犬のワクチン
狂犬病ワクチン
狂犬病はワンちゃんだけでなく、人間にも感染する病気です。治療法が確立されておらず、発症によりほぼ100%死亡するといわれており、生存例も現在までにごくわずかです。日本では狂犬病予防法により、年1回の狂犬病ワクチン接種が義務付けられており、1957年以降は感染が報告されていません。毎年4月~6月は狂犬病予防注射月間です。感染予防を維持するためにも、接種を忘れないように飼い主様は注意しましょう。
犬の混合ワクチン
ワンちゃんの混合ワクチンは、5種と7種をご用意しております。室内や室外など、飼育環境によっても適したワクチンが異なりますので、獣医師にご相談ください。
混合ワクチンの接種義務はありませんが、予防を目的に年1回の接種を当院では推奨しております。ワンちゃんが安心して長く暮らせるようにも、ぜひご利用ください。
猫のワクチン
ネコちゃんの混合ワクチンは、3種と5種をご用意しております。当院では、3種の混合ワクチン接種が基本です。しかし、外に出る機会が多い場合や多頭飼いをしているなどには、5種の混合ワクチンの接種が適している可能性があります。
適した季節に行う予防「フィラリア・ノミ・マダニ」
フィラリア予防
フィラリア症とは、蚊を媒介に感染する病気です。犬糸状虫という寄生虫が肺や心臓に寄生し、血液中の栄養分を吸い取ってしまいます。肝臓や腎臓の異常が起こりやすく、なかには死に至るケースもあります。その子にあったお薬を使い、フィラリアにならない予防をすることが重要です。
猫・フェレットのフィラリアにもご注意ください
ネコちゃんやフェレットも、フィラリアに感染する恐れがあります。室内飼いであっても、室内に侵入した蚊を媒介に感染するリスクを否定できません。特にフェレットの場合は、インスリノーマという病気を発症し、低血糖により命の危険もあります。もしもの備えとして、予防薬のご利用をご検討ください。
ノミ
ノミは体の表面に寄生し、血液を吸う虫です。1匹あたりの吸血量は少ないですが大量に寄生すると、子犬や子猫の貧血の原因になります。
寄生により強いかゆみを引き起こし、脱毛や湿疹、ノミアレルギー性皮膚炎などの病気のリスクを高めます。また皮膚をなめてノミを食べてしまった結果、ノミの体内に存在する瓜実条虫が小腸に寄生し、下痢や嘔吐、便に虫が出るなどの症状を引き起こすのです。
ノミは気温13℃以上であれば活動し、寄生後は24時間~48時間の間に産卵をはじめます。1回の産卵で最大50個の卵を産むといわれ、目に見えているノミは5%ほど。残りの95%は卵・幼虫・サナギの状態で体表に隠れているのです。冬であっても暖かい室内であれば、ノミの感染・繁殖が拡大する恐れがあります。
ノミを予防するお薬として、内服タイプとスポットタイプのご用意が可能です。当院では通年予防を推奨しておりますので、まずはご相談ください。
マダニ
マダニは全国に生息し、あらゆる気候や場所にも順応する虫です。山林以外にも草むらの中にも潜んでおり、顔や足先、背中などを中心に寄生します。
寄生に伴う皮膚炎に加えて、原虫(犬バベシア症)や細菌(猫ヘモバルトネラ症)による貧血のリスクが高まります。
マダニによる影響は犬猫だけじゃなく、人間も注意が必要です。SFTS(重症熱性血小板減少症候群)という感染症を媒介し、命を脅かすときもあります。
ワンちゃんやネコちゃん、ヒトの命を守るためには、マダニの予防が欠かせません。当院では通年予防を推奨しており、お薬は内服タイプまたはスポットタイプのご用意が可能です。
いざという時の「マイクロチップ」
「マイクロチップ」とは皮下埋め込み型の電子標識器具であり、動物たちの個体識別を目的にしています。マイクロチップは動物たちにおける身分保証であり、迷子になった子が飼い主様の元に無事に戻れる確率が大幅にアップします。
近年では動物愛護法の改正により、ブリーダーやペットショップでワンちゃんやネコちゃんのマイクロチップ装着が、2022年6月から義務化されます。
マイクロチップの表面は生体適合するガラスで覆われており、副作用の心配がほとんどありません。当院でもマイクロチップの埋め込みが可能です。大切な家族の一員である動物たちの身分を保証するためにも、ぜひご利用ください。